サイバーセキュリティ月間

2021年3月16日(火) 

あなたが持つ〇〇バイアス

株式会社ラック
シニアリサーチャー   鈴木   悠

   

 
 
   数学は中二で挫折した私ですが、セキュリティベンダーに勤めて15年目となりました。ここ数年は、大学時代に専攻していた社会心理学の知識を活かしてサイバーセキュリティの研究・啓発活動をしています。
 
   きっかけは、2013年に興味本位で標的型メールの分析をしたことです。攻撃者はどのようにターゲットの行動を誘導しようとしているのか、そしてターゲットとなった被害者はなぜ攻撃者に導かれるまま行動してしまうのか。攻撃者も被害者も人であるため、人の心理や内面に焦点をあてた研究も有用なのではないかと考えたのです。
 
   私たちは「気を付けていれば大丈夫」なのでしょうか?
 
   2016年、イギリスで欧州連合離脱是非を問う国民投票が行われました。投票結果は残留支持が約48%、離脱支持が52%と、僅差で離脱が決定しました。この投票において問題視されたのが、イギリスの選挙コンサルティング会社であるケンブリッジ・アナリティカ社によるマイクロターゲッティングです。
 
   ケンブリッジ・アナリティカ社は、ソーシャルメディア上で公開していた性格診断アプリに答えたユーザ27万人とその友人のプロフィール情報、そして性格診断結果として得られたパーソナルデータを活用し、ユーザの心理的特性に応じた政治広告を表示しました。
 
   性格診断アプリには、人の行動や思考を5つのパーソナリティ特性によって説明する「ビッグファイブ」理論が使われていました。統計的な検証がされている指標のため、科学的にも信頼性が高いと心理学の研究ではよく利用されます。ケンブリッジ・アナリティカ社は、人の性格特性から政治的な傾向を予測し、広告ツールの機能を利用して説得可能なユーザを特定していたと発言しています。
 
   皆さんも、ウェブブラウザで検索した商品などが、ソーシャルメディア上で広告として表示されるという経験があるかと思います。これはブラウザの検索・閲覧履歴データを利用した追跡型広告(リスティング広告)です。自分の興味・関心があるものをおススメしてくれるため便利と感じる方もいれば、不要という方もいるでしょう。スマートフォンでは、設定することで配信を制限することも可能です。
 
   このように、私たちは知らない間に、自分好みの情報に埋もれているかもしれません。人には、自分の考えを肯定する情報を集め、否定する情報を無視するという「確証バイアス」の傾向があります。ソーシャルメディアの表示アルゴリズムが確証バイアスを助長し、自分の考えは多数派で正しいという錯覚(フォールスコンセンサス)に陥りやすくなるのです。
 
   価値観とは、自分のいる環境において徐々に形成されるものです。偏った情報からは、偏った知識・価値観が形成されやすくなる可能性があります。果たして、私たちは表示された情報が真実なのか虚偽なのか、疑う目を養うことはできるのでしょうか。
 
   十人十色という言葉があるとおり、人の考えや価値観はさまざまです。多様化が求められる昨今、皆さんが多くの考えに触れ、寛容さをもってインターネットを利活用することを私は願っています。
 
   これからも、人の心理的特性や行動傾向から、人が自発的にセキュリティ行動をとる仕組みや取組みについて研究し、安心・安全な社会に貢献したいと考えています。
 

※記載内容は執筆者の知見を披露されているものであり、著作権は本人に帰属します。

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